一人暮らしの収納アイデア|画びょうの穴は貸主の負担

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一人暮らしの収納を考えるとき、まず頭に浮かぶのは「収納グッズを買い足す」ことだと思います。

その前に、ひとつだけ数字を見てください。

環境省の推計によると、私たちが持っている服の45%は、使われずにしまい込まれているそうです。クローゼットの中身の半分近くが、出番のないまま場所を取っている計算です。

つまり多くの場合、足りないのは収納ではありません。入っているものの内訳のほうなんですね。

この記事では、一人暮らしの収納を減らす・奥行き・壁・高さの順に整理し、最後に湿気とカビの費用の話を足しました。

もうひとつ、後半に置いた話があります。国土交通省のガイドラインには、壁の画びょうの穴は貸主(賃貸人)の負担と書かれています。

壁を収納に使えるかどうかの分かれ目なので、原文をそのまま引きます。

収納を増やす前に、しまい込んでいる分を数えます

部屋の現状を、まず数字で押さえておきましょう。

環境省のサステナブルファッションには、家庭の衣類についてこんな数字が並んでいます。

項目数値出典・前提
持っている服のうち使われずにしまい込まれている割合45%消費者アンケートの分析結果と家庭への新品衣類投入量(推計値)に基づく推計。推計対象年は2023年
一年間一回も着られていない服1人あたり24着令和7年度 循環型ファッションの推進方策に関する調査業務(アンケート調査)
手放した服が再活用される割合約42%同調査 報告書概要版(マテリアルフロー)
リユース・リサイクルされずに処分される量年間 約46万トン同上

45%と24着。この2つが、一人暮らしの収納が足りなくなる理由をほぼ説明しています。

前者は「持っている服のうちの割合」、後者は「一年間の着用実績」で、測っているものが違います。両方に共通しているのは、買った量に対して出番が追いついていないという点です。

3年で引っ越す前提で考えます

日本賃貸住宅管理協会の日管協短観(第28回)によると、単身世帯の平均居住期間は3年3ヶ月でした(全国・2023年度)。

3年ごとに荷物ごと移動する、という前提です。収納を増やすと、そのぶん引っ越しで運ぶものと、退去時に処分するものが増えていきます。

政府は家庭から廃棄される衣類の量を、2030年までに2020年度比で25%削減する目標を掲げています(環境省)。

処分の手間を減らす意味でも、増やす前に減らすほうが先です。

収納家具は「捨てるときの費用」まで見ます

収納ケースやラックを買い足すときは、出口の費用も確認しておきましょう。

大きな家具は自治体の粗大ごみになり、事前申し込みと手数料が必要です。何センチから粗大ごみになるかは自治体ごとに違うので、住む予定の市区町村のページで確認してください。

見落としやすいのが、分解しても安くならないという点です。世田谷区はこう案内しています。

粗大ごみの処理手数料は、原則として解体前の大きさで決まります。

— 世田谷区「粗大ごみの出し方」

同じページには、解体が可能なもの(スチール製の棚、ベッド、タンス、テーブル等)であっても解体しても手数料は変わらない、と書かれています。

小さく分解すれば安くなる、という考え方は通用しないわけです。

一人暮らしの収納は「奥行き」で使い勝手が決まります

ここからは、部屋の空間の使い方に入っていきましょう。

収納は幅と高さで語られがちですが、実際に使いやすさを左右するのは奥行きです。収納建材メーカーの南海プライウッドは、クローゼット用の棚板を290mm・440mm・590mmの3種類の奥行きで用意しています。

棚板の奥行き想定される使い方
290mm本、小物、書類、日用品のストック。通路を狭めずに壁際へ置ける
440mm畳んだ衣類、収納ケース。クローゼットの中段向き
590mm掛けた衣類、バッグ、家電の箱

※寸法の3値は南海プライウッドの製品仕様です。右列は本記事による整理で、同社の案内ではありません。

自分がどの奥行きを必要としているかは、しまうものが決めます。先に入れるものを決めてから、奥行きを選ぶという順番にしてみてください。

物件そのものの収納量は間取りでも変わります。タイプ別の違いは一人暮らしの間取りおすすめで整理しました。

深い収納は前後2列で使います

押入れのように奥行きの深い収納がある物件では、奥のものが取り出せなくなりがちです。

対策はシンプルで、前後2列に分けて、後ろに使用頻度の低いものを置くこと。季節家電、来客用の寝具、旅行かばんなどが後列の候補です。

前列にはキャスターのない引き出し式のケースを置くと、後列に手が届きます。

棚とパイプには積載限度があります

見落としやすいのがここです。作り付けの棚やハンガーパイプにも、耐えられる重さの上限があります。

大建工業の押入棚板セットでは、注意事項としてこう案内されています。

棚板は200kg以内です。(棚板はどのサイズでも積載限度は同じです)

枕棚板は、均一に荷物をのせた状態で枕棚板とハンガーパイプの両方で70kg以内です。(ハンガーパイプ単体では30kg以内です)

— 大建工業「押入棚板セット」

冬物のコートやダウンをまとめて掛けると、30kgは意外と早く到達します。掛ける量が増えてきたら、畳む収納に振り分けるほうが安全です。

同じ注意事項には、棚板に傷がつく恐れがあるためキャスター付き収納ボックス等の使用は避けるように、とも書かれています。退去時の負担にも関わってくる部分です。

壁を使うと、床が空きます

一人暮らしの部屋で最も余っている面は、床でも天井でもなく壁です。ただ賃貸だと、穴を開けていいのか迷いますよね。

判断の基準は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版・平成23年8月)にあります。

画びょうの穴は誰が負担するのか

ガイドラインの別表3「契約書に添付する原状回復の条件に関する様式(例)」には、賃貸人・賃借人の修繕分担表が載っています。賃貸人(貸主)の負担となるものとして、壁・天井の欄にこう並んでいます。

【壁、天井(クロスなど)】

  1. テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
  2. 壁に貼ったポスターや絵画の跡
  3. 壁等の画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)
  4. エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡
  5. クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)

— 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」別表3

3番が該当します。画びょうやピンの穴は、貸主が負担するものとして整理されています。

同じ様式は、負担の一般原則を2行で示しています。

・賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用方法を超えるような使用による損耗等については、賃借人が負担すべき費用となる。
・建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)及び賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)については、賃貸人が負担すべき費用となる

— 同上

画びょうの穴は、下の行の「通常の使用により生ずる損耗」の側に入っている、という読み方になります。

くぎ穴・ネジ穴との境目

ただし、条件が付いています。カッコ内の「下地ボードの張替えは不要な程度のもの」という部分です。

同じ表の賃借人(借主)の負担となるものには、こう書かれています。

  1. 壁等のくぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替えが必要な程度のもの)

— 同上

ここは道具の名前に引っ張られやすいところです。

分かれ目は「画びょうかネジか」という道具の違いではなく、下地ボードの張替えが必要かどうかです。壁紙の裏にある石膏ボードまで傷めると、借主の負担になる側へ移ります。

もうひとつ、賃借人負担のほうには「重量物をかけるためにあけたもの」という条件も付いています。この2つは並べて書かれているので、セットで読むのが正確です。

なお、契約書に別の特約が付いている場合はそちらが優先されることがあります。契約書の原状回復に関する条項は、入居前に読んでおきましょう。

賃貸で使える壁面の作り方

以上をふまえると、賃貸の壁を収納に使う方法は次のように整理できます。

方法壁への影響向いているもの
ピン・画びょう式のフック細い穴のみ帽子、バッグ、鍵、軽い小物
粘着式のフック穴は開かないが、剥がすときに壁紙を傷めることがあるごく軽いもの
突っ張り式の柱・ラック穴が開かない棚、ハンガーポール
ネジ・アンカー下地ボードまで到達する重量物。借主負担になる側

重いものを掛けたいときは、壁ではなく突っ張り式に逃がすのが、賃貸では扱いやすい方法です。

天井までの高さを使い切ります

床の面積は変えられませんが、高さ方向にはまだ余白があります。

居室の天井の高さには、法律で下限が決まっています。建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第21条です。

第二十一条 居室の天井の高さは、二・一メートル以上でなければならない。
2 前項の天井の高さは、室の床面から測り、一室で天井の高さの異なる部分がある場合においては、その平均の高さによるものとする。

— e-Gov法令検索「建築基準法施行令」

読み方のポイントは第2項です。天井高は「床面から測る」と決められていて、天井の高さが一定でない部屋では平均値をとります。

つまりどの物件でも、居室には最低2.1mの高さがあります。高さ120cmの収納を置いても、その上に90cm以上の空間が残ります。

突っ張り棒は約9割が付け方を間違えています

高さを使う道具として定番なのが突っ張り棒です。ただ、落ちてしまった経験のある人も多いのではないでしょうか。

メーカーの平安伸銅工業は、こう書いています。

実は、約9割もの人が突っ張り棒を間違って取り付けてしまっているんです!!

— 平安伸銅工業「突っ張り棒の正しい取り付け方」

同社の解説から、要点を挙げます。

  • バネ式:パイプに内蔵されたバネを圧縮し、壁面に対する反発力で固定する。仕切りや軽いもの向け
  • ジャッキ式:パイプを伸ばして固定し、端のグリップを回して壁に圧力をかける。バネ式より突っ張る力が強い
  • バネ式は、取り付ける幅より数センチ長めに伸ばしてから縮めて入れる
  • ジャッキ式の両端キャップは、長いほうが下になるように設置する
  • 長く伸ばすほどたわみやすく、耐荷重は小さくなる

重いものを載せるつもりでバネ式を選ぶ、というのが落下でいちばん多いパターンです。何を載せるかを決めてから、方式を選んでください。

高さを使うときは、重心も一緒に考えます

高さを使えば床は空きますが、上に重いものが集まると別の問題が出てきます。

東京消防庁は、こう述べています。

地震のケガの原因の約30%~50%が、家具類の転倒・落下・移動によるものでした。

— 東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動による危険」

一人暮らしでは、倒れたときにすぐ助けを呼べる人がそばにいません。重いものは下の段、軽いものを上の段という配置にしておくと、重心が下がって倒れにくくなります。

寝る場所の真上や真横に、背の高い収納を置かないという判断も有効です。レイアウトの段階で解決できる部分なので、家具を動かす前に考えておきましょう。

収納の湿気は、カビの費用に直結します

収納の中は、空気が動きにくい場所です。ここは退去時の費用にも関わってきます。

先ほどの修繕分担表には、賃借人(借主)の負担となるものとして、こう書かれています。

  1. 賃借人が結露を放置したことで拡大したカビ、シミ(賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合)

— 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」別表3

ここも条件付きです。「賃貸人に通知もせず」「拭き取るなどの手入れを怠り」の2つが並んでいます。

結露やカビが出たこと自体ではなく、気づいたのに知らせず放置したことが負担の理由になっている、という構造です。見つけたら管理会社に連絡しておけば、この条件からは外れます。

湿度の目安は40〜70%です

湿度の基準として使えるのが、建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令(昭和45年政令第304号)第2条の建築物環境衛生管理基準です。

空気調和設備を設けている特定建築物に適用される基準で、空気環境の項目にこうあります。

五 相対湿度
四十パーセント以上七十パーセント以下

— e-Gov法令検索「建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令」第2条第1号イ

延べ面積3,000平方メートル以上といった規模の建築物が対象で、住宅に直接かかる義務ではありません。ただ、国が示している数値なので目安としては使えます。

空気を動かす3つの方法

収納の中でできることは、次の3つです。

  • 壁から数センチ離して置く:空気の通り道をつくる
  • 床にすのこや棚板をかませる:下に空気が入る
  • たまに扉を開ける:閉め切りの時間を減らす

除湿剤を置くより、まず空気が動く隙間をつくるほうが効きます。

一人暮らしの収納に関するよくある質問

Q. 収納が少ない物件は避けたほうがいいですか?

A. 収納の有無は家賃にも影響するので、優先順位の問題です。

クローゼットの内寸(幅・奥行き・高さ)を内見時に測っておくと、入居後に買う収納家具が決まります。

Q. ベッド下収納は使えますか?

A. 高さがあるフレームなら有効です。

ただし床に近い場所は湿気がたまりやすいので、通気性のあるケースを選び、たまに引き出して空気を通してください。

Q. 壁に穴を開けずに棚をつけたいです

A. 突っ張り式の柱に棚板を渡すタイプが選択肢になります。

天井と床の間で突っ張るため、天井の下地の位置を確認したうえで設置してください。

Q. 粘着フックは画びょうより安全ですか?

A. 穴は開きませんが、剥がすときに壁紙を破損することがあります。

ガイドラインが「下地ボードの張替えは不要な程度」を基準にしている点をふまえると、穴の有無だけで判断しないほうが確実です。

まとめ|収納は「減らす・奥行き・壁・高さ」の順で考える

最後に、今回の要点を6つ並べます。

  • 持っている服の45%は使われずにしまい込まれている(環境省の推計)。増やす前に減らす。
  • 単身の平均居住期間は3年3ヶ月。3年後に運ぶ量と捨てる量まで考えて買う
  • 奥行きは290/440/590mmが目安。しまうものを決めてから選ぶ
  • 画びょう・ピンの穴は貸主の負担。ただし「下地ボードの張替えは不要な程度」が条件
  • 天井は法律上2.1m以上。高さ120cmの収納の上には90cm以上余っている
  • 結露やカビは、放置したことが借主負担の理由になる。見つけたら管理会社へ連絡する

収納の話は、道具を増やすほど部屋が狭くなるという逆転が起きやすい分野です。

だから最初にやるのは、買い物ではなく仕分けです。クローゼットを開けて、この1年で一度も着なかった服を1枚だけ取り出してみてください!まずは減らすことが先決です。

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