「これ、入りませんね」
搬入当日、玄関先で配送業者さんから驚きの言葉が…。
注文したのは幅70cmのチェスト。玄関ドアの表示寸法は約780mm、つまり78cmですから、余裕で入るはずでした。
ところが、賃貸でよく使われる玄関ドアで実際に物を通せる幅はもっと小さくて通らないことも…(DAIKEN「ドアの幅や高さの測り方」)。
この記事では、一人暮らしの家具を買う順番、サイズ選びの基準、そして搬入経路の測り方までまとめました。
サイズと並んでもうひとつ大事なのが、地震です。東京消防庁によると、地震のケガの約30〜50%は家具類の転倒・落下・移動が原因。一人暮らしの家具は「倒れる前提」で選ぶ必要があります。
「買う前に測る」を是非意識してみてください。
一人暮らしの家具は3段階に分けて買う

家具(家電は除く)選びで失敗する原因は、入居前に全部そろえようとすることです。家具は、次の3段階に分けて考えると迷いません。
| 段階 | 家具 | 理由 |
|---|---|---|
| 入居日までに必要 | 寝具(ベッドまたは布団)、カーテン | 寝る場所と、外からの視線を防ぐもの |
| 1〜2週間以内 | テーブル、収納家具、椅子 | なくても数日は過ごせるが、生活が整わない |
| 住んでから考える | ソファ、ラグ、デスク、テレビ台 | 部屋の使い方が見えてから決めたほうが失敗しない |
入居日に必要なのは、寝具とカーテンの2つです。
カーテンは意外と忘れられがちですが、初日の夜に部屋の中が丸見えになります。防犯面でも困るので、ここは優先度が高いと考えてください。
なおラグやソファを「住んでから」に置いているのは、部屋の広さに対して大きすぎた、という失敗がいちばん多い家具だからです。実際に住んで動線が見えてから決めるほうが確実です。
一人暮らしにおすすめの家具5選|優先度が高い順
1. ベッド|「シングル」に統一規格はありません
寝具は最優先です。床に直接寝ると、湿気で寝具が傷みやすくなります。
ここでひとつ、知っておくと役に立つ話を。「シングル」「セミダブル」という呼び名に、公的な規格はありません。
ベッドの寸法を定めているのはJIS S 1102:2017「住宅用普通ベッド」という規格です。ここで規定されているのは呼び名ではなく、次の数値です。
- 呼び寸法(幅):820mm/980mm/1100mm/1200mm/1400mm/1520mm
- 呼び寸法(長さ):1950mm/2050mm
一般に「シングル」と呼ばれるのが幅980mm前後、「セミダブル」が1200mm。ただしこれは慣例であって、メーカーによって同じ「シングル」でも数センチ違うことがあります。
商品名ではなく、必ずミリ単位の実寸で確認してください。 1Kの居室は6畳前後が多く、数センチの差が動線に効いてきます。
なお最初は布団という選択もあります。使わないときに畳めるので、6畳未満の部屋では合理的です。
2. カーテン|11階以上に住むなら防炎品が必要です
カーテンは入居日までに必要な数少ない家具です。そして実は、建物によっては選べる商品が法律で限られます。
消防法第8条の3では、高さ31mを超える高層建築物について、用途に関係なくカーテンやじゅうたんに防炎性能のあるもの(防炎物品)を使うよう定めています(日本防炎協会)。
高さ31mは、おおむね11階建て以上にあたります。住宅専用の低層アパートは対象外ですが、タワーマンションや11階以上のマンションでワンルームを借りる場合、あなたの部屋のカーテンも規制の対象です。
該当する場合は「防炎ラベル」の付いた商品を選んでください。契約時に管理会社から案内があることも多いので、確認しておきましょう。
サイズは既製品(幅100cm×丈135cm/178cmなど)で足りることがほとんどですが、カーテンレールの長さを測ってから買うのが基本です。窓の幅ではなくレールの幅、という点に注意してください。
3. テーブル|「食べる」と「作業する」を1つにまとめる
一人暮らしの部屋にダイニングテーブルと作業デスクの両方を置くのは、面積的に厳しいことが多いです。
最初は幅75〜90cmのローテーブルか、折りたたみできるテーブル1つで足ります。食事も作業もこれ1つでまわしてみて、足りないと感じてからデスクを足すほうが無駄がありません。
在宅勤務が中心なら、はじめから幅100cm前後のデスクを選ぶ判断もあります。どちらを選ぶかは、1日にその机で過ごす時間で決めてください。
4. 収納家具|幅ではなく「奥行き」で決まります
収納は幅ばかり見られがちですが、部屋の使いやすさを左右するのは奥行きです。
- 奥行き30cm前後:本・小物向け。通路を圧迫しにくい
- 奥行き45cm前後:衣類が畳んで入る。一人暮らしの標準
- 奥行き60cm以上:収納力は高いが、6畳の部屋では通路が狭くなる
まず部屋の通路幅を確保してから、残りの奥行きで家具を選ぶという順番にすると失敗しません。人が普通に通るには、最低でも50〜60cmの通路がほしいところです。
備え付けのクローゼットがある物件なら、収納家具は小さいもので足りることも多いです。内見時にクローゼットの内寸を測っておきましょう。
5. 椅子|床に座るか、椅子に座るかを先に決める
椅子は最後で構いません。ただし「床座り」と「椅子座り」のどちらで暮らすかは、テーブルを買う前に決めておく必要があります。
ここが決まっていないと、ローテーブルと高さの合わない椅子を買ってしまう、という失敗につながります。
- 床座り:ローテーブル+座椅子またはクッション。家具が低いぶん部屋が広く見える
- 椅子座り:高さ70cm前後のテーブル+椅子。立ち座りが楽で、長時間の作業に向く
搬入経路の測り方|数字は「有効開口幅」で見ます

搬入で一番重要な要素は「開口幅」です。
カタログに載っているドアの寸法と、実際に物が通る幅は違います。通るかどうかを決めるのは有効開口幅、つまり扉を開けた状態での枠の内側の幅です。
建材メーカーのDAIKENは、測り方をこう説明しています。
扉を開けた状態で、枠内の上部・中央部・下部の3ヵ所を測ります。サイズが異なる場合には、最も小さいサイズを採用します。このサイズを「有効開口寸法」といいます。
3か所測って最小値を採る、というのがポイントですね。古い建物では枠が歪んでいることもあります。
そして必要な余裕についても、同じ記事にこうあります。
どの部分も搬入する家具・家電の幅+10~20cmぐらいの幅を確保したいところです。
「どの部分も」がポイントです。玄関だけでなく、廊下も曲がり角も室内ドアも、すべてで余裕が要ります。ぴったりでは通りません。
玄関から部屋まで、どこを測るか
| 測る場所 | 測り方 | 目安 |
|---|---|---|
| 玄関ドア | 開けた状態の枠の内側(上・中・下の3か所) | 家具の最短辺+10〜20cm |
| 廊下の幅 | いちばん狭いところ | 家具の最短辺+10cm |
| 曲がり角 | 角の対角線と天井高 | 家具を立てて回せるか |
| 室内ドア | 玄関と同じ要領で | 家具の最短辺+10cm |
| 階段・エレベーター | 踊り場の広さ、かごの奥行き | 家具の最長辺が収まるか |
大きな家具は、幅・奥行き・高さのうち最も短い辺を先頭にして運びます。 そのため「最短辺が通るか」で判断するのが基本です。
ただし曲がり角では家具を立てたり斜めにしたりするため、対角線の長さが効いてきます。ソファのような大物を検討するときは、対角線も計算しておきましょう。
内見のときに間取りや設備と一緒に測っておくと、二度手間になりませんよ。
冷蔵庫置き場や洗濯機の防水パンなど、家電まわりで測るべき箇所は一人暮らしの家電おすすめ7選にまとめています。
家具は「倒れる前提」で選びます

家具を選ぶときは楽しくてデザインと値段だけで選ばれがちですが、一人暮らしでは倒れたときに助けを呼べる人がそばにいないという前提にも目を向ける必要があります。
東京消防庁は、近年の地震被害調査についてこう述べています。
地震のケガの原因の約30%~50%が、家具類の転倒・落下・移動によるものでした。
3割から5割です。部屋の中のものでケガをしているという数字ですね。
地震大国である日本では、地震に対しての備えも意識しなければなりません。
賃貸でもできる固定方法
もっとも確実なのは、壁にL型金具でネジ止めする方法です。ただし賃貸では原状回復の問題があり、そのままでは難しいことが多いですよね。
東京消防庁は、ネジ止めが難しい場合について「突っ張り棒とストッパー式」「突っ張り棒と粘着マット」を組み合わせると効果が高くなるとしています。単体で使うより、2種類を併用するのが要点です。
家具選びの段階でできる対策もあります。
- 背の高い家具を買わない:高さ120cm以下なら転倒リスクが下がる
- 寝る場所の近くに背の高い家具を置かない:レイアウトで解決できる
- 扉付きの収納を選ぶ:中身の飛び出しを防げる
- 重いものを下の段に入れる:重心が下がって倒れにくくなる
買う前の1分で決まる対策なので、サイズを検討する段階で一緒に考えておきましょう。
買う前に、捨てるときの費用も見ておく
今までは家具を買う時にフォーカスしてきましたが、買うときより捨てるときのほうが手間がかかります。
一定の大きさを超えるものは粗大ごみ扱いとなり、事前申し込みと手数料が必要です。基準となる寸法は自治体によって違う(一辺30cm以上、50cm以上など)ので、お住まいの自治体のサイトで確認してください。
金額の目安として、新宿区ではシングルベッド(マット除く)1,300円+マットレス1,300円で、フレームとマットレスのセットなら2,600円です(新宿区「粗大ごみの処理手数料一覧」)。
ここで知っておきたいのが、解体の扱いです。世田谷区は、解体が可能なベッドやタンスであっても「解体しても手数料は変わりません」としています(世田谷区)。
実は「分解して小さくすれば安くなる」と考えて労力をかけても、金額は同じということですね。
不用品回収業者に頼めば運び出しまで任せられますが、粗大ごみより高くつきます。金額は業者ごとの差が大きいので、複数社で見積もりを取ってください。
数年で引っ越す予定があるなら、この出口の費用まで含めて、家具のサイズと数を決めておきましょう。
一人暮らしの家具に関するよくある質問

Q. 家具は入居日までにそろえるべきですか?
A. 寝具とカーテンだけで構いません。それ以外は住んでから買っても支障はなく、むしろ部屋の使い方が見えてから買うほうが失敗が減ります。
Q. 家具付き物件はお得ですか?
A. 初期費用は確実に下がります。ただし家具の入れ替えができず、退去時に破損があれば原状回復の対象です。短期間の入居なら合理的な選択になります。
Q. 組み立て家具と完成品、どちらがいいですか?
A. 搬入経路が狭い部屋では組み立て家具が有利です。箱の状態で運べるため、玄関の有効開口幅が足りなくても入ることがあります。
Q. 中古やフリマアプリで買っても大丈夫ですか?
A. 家具は電気製品と違って故障リスクが小さいので、比較的向いています。ただし自分で搬入する場合は、寸法の実測値を出品者に確認してください。商品名のサイズ表記だけでは判断できません。
Q. 予算はどのくらい見ておけばいいですか?
A. 最小構成(寝具・カーテン・テーブル・収納)で3万〜6万円ほどが目安です。契約金や家電まで含めた全体像は、初期費用の記事で整理しています。
まとめ|家具は「買う順番」と「測る順番」で決まる

最後に、本記事を簡単に6つの要点にまとめて振り返っていきましょう。
- 入居日までに必要な家具(家電除く)は寝具とカーテン。残りは住んでから決める
- 「シングル」に公的規格はない。搬入のため、ミリ単位で確認する
- 31m超(おおむね11階以上)の建物では、カーテンは防炎品が必要(消防法)
- 通るかどうかは有効開口幅で決まる。枠の内側を3か所測って最小値を採り、家具の幅+10〜20cmの余裕を見る
- 地震のケガの約30〜50%は家具の転倒・落下・移動。背の高い家具を寝る場所の近くに置かない
- 解体しても粗大ごみの手数料は下がらない。捨てるときの費用まで見て買う
家具選びは、カタログを眺める時間より、メジャーを持って測る5分のほうが有効になります。
とはいえ面倒な部分もあるので、自分の家の開口幅を店員さんに伝えて相談してみるのも1つの方法です。
まずは、メジャーを持って玄関ドアを開け、枠の内側を測ってみましょう。この数字で、買える家具と買えない家具が最初から分かれます。
カタログを開くのも楽しいですが、まず実寸から始めましょう。


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