4階建て以上のマンションで起きた空き巣は、2024年に全国で1,205件。そのうちガラス破りは125件で、合い鍵は333件でした(警察庁「令和6年の刑法犯に関する統計資料」)。
窓を割られる件数より、鍵で開けられた件数のほうが2.7倍多いんです。
「空き巣=ガラスを割って入る」というイメージは、実は一戸建ての話でした。一人暮らしの多い共同住宅では、狙われる場所も手口も違います。
防犯グッズを買う前に、まず数字を見ておきましょう。合い鍵の話は、契約前にしか動かせないポイントなので、後半でまとめて扱います。
一人暮らしの防犯ポイント 10選【一覧表】

まずは防犯ポイントを10個みていきましょう。
10個のうち5個は、部屋を決める前にしか実行できません。内見のときに防犯面もしっかり考えましょう。
| # | 対策 | 根拠になる数字・目安 | いつやるか |
|---|---|---|---|
| 1 | 3階建て以下より4階建て以上の建物を選ぶ | 10万世帯当たりの空き巣認知件数が35.1件→19.2件 | 物件探し |
| 2 | 共用玄関と共用廊下の明るさを夜に見る | 国の設計指針の目安は玄関内側50ルクス・廊下20ルクス | 内見 |
| 3 | 共用玄関からエレベーターホールまでの見通しを見る | 死角がある場合は防犯カメラの有無を確認 | 内見 |
| 4 | 玄関扉の錠・ドアスコープ・ドアチェーンを見る | CPマーク付きは5分以上の侵入抵抗を確認済み | 内見 |
| 5 | 窓の面格子・補助錠と、バルコニーへの足場を見る | 3階建て以下は侵入口の40.6%が窓 | 内見 |
| 6 | 入居時に鍵を交換してもらう | 4階建て以上の空き巣の27.6%が合い鍵 | 契約時 |
| 7 | 数分の外出でも施錠する | 4階建て以上の空き巣の37.8%が無締り | 毎日 |
| 8 | 窓に補助錠を1つ足す | 侵入にかかる時間を延ばす | 入居直後 |
| 9 | 表札・郵便受け・洗濯物の出し方を変える | 単身世帯だと外から分かりにくくする | 入居直後 |
| 10 | 来訪者はドアスコープとチェーンで確認してから開ける | 設計指針が設置を求めている装備 | 毎日 |
※数字は2024年(令和6年)の警察庁統計と、国土交通省の設計指針によります。
一人暮らしの空き巣被害は、どこで起きている?
警察庁の統計では、2024年の空き巣(留守中を狙う侵入窃盗)は10,968件でした。
注目したいのは、世帯構成別の数字です。
30歳未満の単身世帯が被害に遭った空き巣は975件。うち901件(92.4%)が共同住宅で起きています。
一戸建ては74件でした。
さらに、住んでいる世帯数で割った数字が効いてきます。
| 30歳未満の単身世帯 | 10万世帯当たりの空き巣認知件数 |
|---|---|
| 3階建て以下の共同住宅 | 35.1件 |
| 4階建て以上の共同住宅 | 19.2件 |
3階建て以下、つまり一般的なアパートは、4階建て以上のマンションの約1.8倍という結果でした。分母には総務省の令和5年住宅・土地統計調査の主世帯数が使われています。
理由は侵入口の内訳を見ると分かります。
| 侵入口 | 3階建て以下 | 4階建て以上 |
|---|---|---|
| 表出入口(玄関) | 1,000件(46.0%) | 712件(59.1%) |
| 窓 | 884件(40.6%) | 336件(27.9%) |
3階建て以下では、窓からの侵入が4割を超えています。地面や外階段から窓に手が届く階が多い建物ほど、窓が入口になりやすい側面があります。
家賃を優先してアパートを選ぶ場合は、この差を知ったうえで窓側の対策を足す、という判断です。間取りごとの選び方は一人暮らしの間取りおすすめでまとめました。
マンションの空き巣で最も多い手口は?

4階建て以上の共同住宅で起きた空き巣1,205件の手口を分けると、次のとおりです。
| 手口 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 無締り(施錠していない) | 456件 | 37.8% |
| 合い鍵 | 333件 | 27.6% |
| ガラス破り | 125件 | 10.4% |
| ドア錠破り | 26件 | 2.2% |
ピッキングは0件、サムターン回しは4件でした。かつて対策の中心だった特殊工具は、統計上ほとんど姿を消しています。
代わりに残ったのが、鍵を開けて正面から入る形です。合い鍵333件のうち332件は玄関からの侵入でした。
ここは慎重に読む必要があります。警察庁の統計は「合い鍵が使われた」ことまでを分類しており、その鍵をどう手に入れたかまでは分類されていません。
ただ、借りる側が契約時に動かせる項目はひとつあります。入居時の鍵交換です。
国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版・平成23年8月)は、鍵の取替えをこう整理しています。
●鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)
(考え方)入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる。
※別表1より
読み方のポイントは「入居者の入れ替わりによる」という理由づけです。前の鍵をリセットする作業は、次の借主のためというより物件管理のため、という位置づけです。
ただし、これは指針であって強制力を持つものではありません。借主負担の特約が契約書に入っている例も多いので、費用の内訳を確認しておきましょう。
大事なのは金額よりも、「この部屋の鍵は、いつ・誰が交換したものか」を契約前に聞いておくことです。ここまでが一覧表の6番にあたります。
内見で必ず見るべき5つのポイント
国土交通省は警察庁と連携し、共同住宅の防犯について具体的な設計指針をまとめています。防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針です。
新築や改修の設計者向けの文書ですが、内見者にとっては「何を見ればいいか」のチェックリストとして使えます。
明るさ(一覧表の2番)
共用玄関の照明設備は、その内側の床面においては概ね50ルクス以上、その外側の床面においては、極端な明暗が生じないよう配慮しつつ、概ね20ルクス以上の平均水平面照度をそれぞれ確保することができるものとする。
共用廊下・共用階段の照明設備は、極端な明暗が生じないよう配慮しつつ、床面において概ね20ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。
この数値は、共同住宅に係る防犯上の留意事項の注記で言い換えられています。
- 50ルクス:10メートル先の人の顔、行動が明確に識別でき、誰であるか明確にわかる程度
- 20ルクス:10メートル先の人の顔、行動が識別でき、誰であるかわかる程度
違いは「明確に」が付くかどうかです。
つまり照度計は要りません。廊下の端に立って、反対側にいる人が誰か分かるかで判断できます。
もうひとつ見るべきは「極端な明暗が生じないよう」の部分です。明るい場所と真っ暗な場所が交互に並ぶ共用部は、指針が避けたい形にあたります。
見通し(一覧表の3番)
指針は、共用玄関・エレベーターホール・共用廊下について「見通しが確保された位置に配置する」ことを挙げ、確保できない場合は防犯カメラで補うとしています。
内見では、エントランスから自分の部屋のドアまで歩いてみてください。視線が切れる場所が続くなら、そこにカメラがあるかが判断材料です。
玄関まわり(一覧表の4番と10番)
指針は、住戸の玄関扉について「防犯建物部品等の扉及び錠」の設置と、ドアスコープ・ドアチェーンの設置を挙げています。この「防犯建物部品等」には注釈がついています。
注1:「防犯建物部品等」とは、「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」が公表している「防犯性能の高い建物部品目録」に掲載された建物部品など、工具類等の侵入器具を用いた侵入行為に対して、①騒音の発生を可能な限り避ける攻撃方法に対しては5分以上、②騒音の発生を許容する攻撃方法に対しては、騒音を伴う攻撃回数7回(総攻撃時間1分以内)を超えて、侵入を防止する防犯性能を有することが、公正中立な第三者機関により確かめられた建物部品をいう。
読み方のポイントは、基準が2本立てになっていることです。静かに壊す方法には「5分」、音を出して壊す方法には「7回」という別の物差しが当てられています。
該当する製品にはCPマークが表示されます(公益財団法人全国防犯協会連合会)。玄関の錠やサッシに小さく貼られていることがあるので、内見時に探してみてください。
窓とバルコニー(一覧表の5番)
指針は、共用廊下に面する窓と接地階の窓に面格子等を、バルコニーに面する窓に錠付きクレセントや補助錠を求めています。
あわせて挙げられているのが、雨どい(縦樋)や階段の手すりからバルコニーに上がれる配置です。2階や3階でも、足場になるものが真横にあれば1階と条件が近づく場合があります。
窓の外に立って、上に登れそうなものがないかを見ておきましょう。
建物のタイプ(一覧表の1番)
この4項目を全部満たす物件が家賃の範囲内にあるとは限りません。優先順位をつけるなら、差がいちばん大きかった1番から見ていくことになります。
入居後にできる防犯対策

内見で選べなかった・不足している部分を、住み始めてから足していきます。
施錠を習慣にする(一覧表の7番)。 4階建て以上でも空き巣の37.8%、3階建て以下では47.9%が無締りでした。
ゴミ出しや宅配便の受け取りなど、数分の外出のときこそ効いてくる項目です。
窓に補助錠を1つ足す(一覧表の8番)。 クレセント錠の上か下に、粘着やネジで固定する簡易タイプが売られています。
賃貸で穴を開けたくない場合は、粘着タイプや窓枠に挟むタイプを選びましょう。
外から生活が読めないようにする(一覧表の9番)。 表札を出さない、郵便受けにチラシをためない、洗濯物の干し方を工夫する、といった項目です。
来訪者の確認(一覧表の10番)。 ドアスコープで顔を確認し、チェーンをかけたまま用件を聞く形が、指針の想定している使い方です。
エリアそのものが気になる場合、東京都なら警視庁犯罪情報マップで地域ごとの侵入窃盗の発生状況を確認できます。
よくある質問
Q. 1階の部屋は避けたほうがいいですか?
A. 統計上、共同住宅で侵入口になりやすいのは玄関(表出入口)で、3階建て以下では窓が40.6%を占めます。1階かどうかより、「窓の外に人が立てる場所があるか」「面格子や補助錠がついているか」で見たほうが判断しやすくなります。
Q. オートロックがあれば安心ですか?
A. 4階建て以上の共同住宅でも空き巣は年1,205件起きており、うち59.1%が玄関からの侵入でした。設計指針もオートロックを「望ましい」措置と位置づけたうえで、住戸側の錠やドアチェーンを別途求めています。共用部と住戸、両方をセットで見る形です。
Q. 鍵交換の費用は必ず貸主負担になりますか?
A. 国土交通省のガイドラインは貸主負担が妥当と整理していますが、法的な強制力はありません。借主負担の特約が契約書に明記され、説明を受けていれば有効とされる場合があります。金額と、いつ交換されるのかを契約前に確認しておきましょう。
Q. CPマークの製品は自分で取り付けられますか?
A. 目録には錠・サッシ・ガラス・ウィンドウフィルムなどが掲載され、後付けできるものもあります。ただし賃貸でドアやサッシ本体に手を加える場合は、原状回復の対象になるため管理会社への確認が必要です。
まとめ
この記事の要点は7つです。
- 30歳未満の単身世帯の空き巣被害は、92.4%が共同住宅。一戸建てとは狙われ方が違う
- 3階建て以下のアパートは、4階建て以上のマンションの約1.8倍(10万世帯当たり35.1件対19.2件)
- 4階建て以上で最多の手口は無締り37.8%、次が合い鍵27.6%。ガラス破りは10.4%
- 4階建て以上ではピッキング0件。工具の対策より、鍵の管理と施錠のほうが効く
- 内見では明るさ・見通し・玄関の錠・窓の足場の4点。国の設計指針がチェックリストになる
- 鍵交換は貸主負担が妥当という整理。ただし特約があれば借主負担もあり得るので、契約前に聞く
- 入居後は補助錠1つと施錠の習慣。派手なグッズより習慣化
防犯グッズを買い足すより、内見の30分で見ておけることのほうが多い分野でした。
もし内見の予約が夕方以降になっても、日程が悪いわけではありません。共用玄関と共用廊下の明るさを、実際の暗さで確かめられる回です。むしろ好都合ですよ!


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